先日、お問い合わせフォームから、PMC装備の記事について読者様よりご指摘をいただきました。
「本物のPMC(民間軍事会社)には「迷彩服を着てはいけない」という国際法が適用されている」という記述がありますが正しくありません。
国際人道法が定めているのは、
・正規の軍隊(戦闘員)と民間人(文民)を明確に区別する原則(区分原則)
・軍の制服・迷彩の不当使用禁止
であり、迷彩柄を禁止しているわけではありません。
— お問い合わせフォームでいただいたご指摘より(抜粋)
結論から言います。
ご指摘のとおりでした!
教えてくださって本当にありがとうございます。
せっかくなので、ジュネーヴ条約の条文もアメリカの規則も、原文を1つずつ当たって確認しました。
そこでわかったのが迷彩柄そのものを禁止した国際法は、どこにも無いという事実。
この記事でわかること
- 前の記事の何が間違いだったのか
- 国際人道法が実際に決めていること(条文6つを原文で確認)
- PMCが迷彩を着ない本当の理由=アメリカ国防総省の契約ルール
- サバゲーのPMC装備ではどう考えればいいか
もくじ
【訂正】「国際法で迷彩服を着られない」は間違いでした
PMC装備の記事を公開したのは2021年2月です。
そこから4年以上、間違った説明を載せたままにしてました。
ご指摘をいただいたおかげで、ようやく正しい中身にたどり着けました。
何をどう間違えていたのかから、順にお伝えします。
元の記事でお伝えしていた内容
| PMC装備の記事に載せていた説明(誤り) | |
|---|---|
| のせていた場所 | PMC装備の選び方その1 |
| のせていた説明 | 本物のPMC(民間軍事会社)には「迷彩服を着てはいけない」という国際法が適用されているため、迷彩服を着たくても着れない |
「国際法で決まってるから着られない」と、自信たっぷりに言い切ってました。
しかも語尾に(キリッ)まで付けて。
今どき誰も使わない、古のネットスラングです。
間違った説明なのに、こんなノリまで足して完全に調子に乗ってました。
調べ直した今となっては、顔から火が出そうです(穴があったら入りたい)。
何が間違いだったのか
| 間違いはどこか | |
|---|---|
| のせていた説明 | 迷彩服を禁止する国際法がある |
| 実際は | 迷彩柄そのものを禁止した条文は1つも無い |
| 本当の理由 | アメリカ国防総省の契約ルール(DFARS 252.225-7040) |
間違いは1点だけ。
「迷彩服を禁止する国際法がある」という部分です。
じつは結論そのものは、元の記事とあまり変わらないです。
PMCの装備が私服寄りになるのは事実だから。
でも理由がまるっきり別物でした。
国際法ではなく、アメリカ国防総省が契約で決めているルールが原因です。
国際法(ジュネーヴ条約 第一追加議定書)をガチで読んでみた
戦争のときのルールを決めた条約が「ジュネーヴ諸条約」。
そこに1977年に足されたのが「第一追加議定書」です。
民間人の保護について細かく決めた条約で、PMCの立場を考えるときには必ず出てきます。
迷彩に関係しそうな条文を6つ、原文で確認しました。
上から順に見ていきます!
第48条(区別原則)|服装の指定は一切なし
| 第48条(区別原則) | |
|---|---|
| 決めていること | 戦っている人と民間人、軍事目標と民間のもの(建物・車両など)を、つねに区別すること |
| 服装について | 指定は一切なし |
いちばん土台になる条文です。
「区別しろ」とは決めていますが、その手段として服装を指定した文言はどこにもありません。
第44条3項|見分けをつける義務は正規軍の側
| 第44条3項 | |
|---|---|
| 決めていること | 攻撃の前や攻撃のあいだは、自分が戦っている側だと見分けがつくようにすること |
| 誰に向けたルールか | 戦闘員=正規軍の側 |
| 服装について | 民間人であるPMCの社員に迷彩を禁じた条文ではない |
ここが、僕が誤解していた大元だと思います。
「見分けがつくようにしろ」と言われているのは、正規軍の兵士のほう。
民間人であるPMCの社員に「迷彩を着るな」と命じる条文ではないです。
義務の向きがそもそも逆でした。
第39条(国籍の標章)|禁止は「どの国の軍か」
| 第39条(国籍の標章) | |
|---|---|
| 原文(1項) | It is prohibited to make use in an armed conflict of the flags or military emblems, insignia or uniforms of neutral or other States not Parties to the conflict. |
| 原文(2項) | It is prohibited to make use of the flags or military emblems, insignia or uniforms of adverse Parties while engaging in attacks or in order to shield, favour, protect or impede military operations. |
| 日本語にすると(1項) | その戦いに加わっていない中立国などの旗・記章・制服を使うのは禁止 |
| 日本語にすると(2項) | 相手国の旗・記章・制服は、攻撃をしているあいだや、軍事行動を隠す・助ける・守る・じゃまする目的で使うのが禁止 |
| 服装について | 禁止しているのは「どの国の軍のものか」であって、柄ではない |
迷彩の話にいちばん近そうに見える条文ですが、読むと中身は別でした。
禁止されているのは「よその国の軍の制服を着てなりすますこと」。
マルチカムやウッドランドといった柄そのものは、1文字も出てきません。
第37条(背信行為)|赤十字マークや白旗の悪用が対象
| 第37条(背信行為) | |
|---|---|
| 決めていること | 保護される立場のふりをして、相手を◯したり傷つけたり、捕まえたりするのを禁止 |
| 具体例 | 赤十字マークの悪用、白旗をふって近づいてから撃つ など |
| 服装について | ふつうに迷彩を着ることは当てはまらない |
だまし討ちを禁止した条文です。
守られる立場のフリをして攻撃するのがダメ、という話。
迷彩服を着て動くこと自体は、ここには当てはまらないです。
第47条(傭兵)|6つの条件に服装は入っていない
| 第47条(傭兵) | |
|---|---|
| 決めていること | 傭兵は捕まっても捕虜として扱われない |
| 条件 | (a)〜(f)の6つを全部満たしたときだけ傭兵にあたる |
| 服装について | 6つの条件に服装は入っていない |
| PMCの場合 | アメリカ人が米軍の契約で働くなら(d)「紛争当事国の国民でないこと」で外れる=そもそも傭兵にあたらない |
「PMC=傭兵だから制限がある」という言い方もよく見ますが、条文の傭兵はかなり狭いです。
6つの条件を全部満たさないと傭兵になりません。
しかも服装は、その6つのどこにも入っていないです。
第51条3項|「私服なら安全」でもない
| 第51条3項 | |
|---|---|
| 決めていること | 民間人も戦いに直接参加すれば、そのあいだは保護を失う |
| 服装について | 服装は基準にならない |
逆向きの誤解もつぶしておきます。
「私服を着ていれば民間人として守られる」ということも無いです。
判断されるのは服ではなく、何をしたか。
国際人道法が見ているのは「誰の軍服か」と「何をしたか」。
柄で判断する条文は、6つ読んでも1つも出てきませんでした。
本当の理由はアメリカ国防総省の契約ルールでした
PMCの装備が私服寄りになる理由は、条約ではなく契約書のほうにありました。
アメリカ国防総省が業者と契約するときに使う規則に、はっきり文言が入ってます。
根拠になる文書を3つ確認しました!
DFARS 252.225-7040|許可がなければ軍用被服はNG
| DFARS 252.225-7040(2023年10月版) | |
|---|---|
| 原文 (i)(1) | Contractor personnel are prohibited from wearing military clothing unless specifically authorized in writing by the Combatant Commander. |
| 日本語にすると | 統合軍の司令官から書面で許可をもらわないかぎり、契約社員は軍用の被服を着てはいけない |
| 許可が出た場合 (i)(1)(i) | 識別用のパッチ・腕章・ネームタグ・帽子で、軍人と見分けがつくようにする |
| 許可が出た場合 (i)(1)(ii) | 許可証をつねに携帯する |
止めているのは条約ではなく、契約書。
PMCの社員が軍用の被服を着られないのは、アメリカ国防総省との契約で決まっているからでした。
大事なのは「書面の許可があれば着られる」という点。
つまり絶対禁止ではないです。
DoDI 3020.41|「軍に似た制服」も原則ダメ
| DoD Instruction 3020.41(2024年11月27日版)3.10.c | |
|---|---|
| 原文 | Generally, CCDRs will not authorize the issuance of military clothing to contractor personnel and will not allow contractor personnel to wear military or military look-alike uniforms. |
| 日本語にすると | ふつう司令官は、契約社員に軍用の被服を渡す許可を出さないし、軍の制服や軍に似た制服を着ることも認めない |
| 文書に書かれた目的 | 軍人と見分けがつくようにするため(distinguishable from military personnel) |
ここに「軍に似た制服(military look-alike)」という言葉が出てきます。
軍の制服そのものだけでなく、軍っぽく見える服も原則ダメと書かれてました。
PMC装備が私服寄りに寄っていく直接の原因は、まさにここです!
といっても、DFARSもDoDIも「迷彩はダメ」と柄を名指ししているわけではありません。
対象はあくまで軍用の被服と、軍っぽく見える制服です。
モントルー文書|推奨であって条約ではない
| モントルー文書(2008年・スイス+赤十字国際委員会) | |
|---|---|
| 中身 | グッドプラクティス16/45で「PMSCの要員は個人として識別できるようにすべき」としている |
| 法的な強さ | 法的な拘束力の無い「good practice(推奨)」。条約ではない |
| 服装について | 迷彩柄には触れていない |
PMCの話でよく名前が出る文書なので、あわせて確認しました。
「識別できるように」とは言っていますが、あくまで推奨。
ここでも迷彩の柄には一言も触れていないです。
全部のPMCに当てはまるわけではない
| DFARSが効く範囲 | |
|---|---|
| 当てはまる | アメリカ国防総省と契約して、アメリカ国外に派遣される業者 |
| 当てはまらない | ほかの国の軍や政府から受けた仕事/民間企業から直接受けた警備の仕事 |
ここは正直にお伝えしておきます。
DFARSはアメリカ国防総省の契約条項なので、世界中のPMC全部を縛るルールではないです。
しかも書面の許可という例外もある。
だから「PMCは絶対に迷彩を着ない」と言い切ることもできません。
だから前の記事のように言い切るのは、もうやめておきます。
じゃあサバゲーのPMC装備は何を着ればいい?
答えはかんたんで、好きな服を着ればいいです。
迷彩を混ぜてもまったく問題なし。
フィールドにはフル迷彩の人もいれば、Tシャツにプレキャリだけの人もいます。
そのうえで「PMCっぽさ」を出したいなら、迷彩以外の服を選ぶのが近道。
ジーパンとTシャツにプレートキャリアを乗せるだけでも、それっぽく決まります!
元の記事で伝えていた結論は、そのまま生きてます。
変わったのは理由の中身だけ。
PMC装備と迷彩のよくある質問
Q: PMCは絶対に迷彩服を着ないの?
言い切れないです。
DFARSには「司令官の書面による許可があれば着られる」という例外があるから。
それに規則が効くのはアメリカ国防総省と契約した業者。
アメリカ国防総省との契約でない仕事までは縛られません。
Q: サバゲーのPMC装備で迷彩を混ぜたらダメ?
まったく問題なしです。
サバゲーは自由な遊びなので、着たい服を着るのがイチバン!
迷彩以外で組むとPMCらしさが出やすい、というだけの話です。
Q: PMCと傭兵は何が違うの?
第一追加議定書の第47条では、傭兵になる条件が(a)〜(f)の6つ決まってます。
6つ全部そろって初めて傭兵あつかい。
アメリカ人が米軍の契約で働く場合は「紛争当事国の国民でないこと」という条件から外れるので、条文の上では傭兵にあたらないです。
この記事で確認した出典(原文リンク)
今回あたった原文は、すべてリンクから読めます。
| 原文をそのまま読めるページ | |
|---|---|
| 第一追加議定書(ICRC公式PDF) | 赤十字国際委員会のPDFを開く |
| 第一追加議定書(OHCHR) | 国連人権高等弁務官事務所のページを開く |
| DFARS 252.225-7040 | 米政府調達サイトを開く |
| DoD Instruction 3020.41 | 米国防総省のPDFを開く |
| The Montreux Document | スイス連邦外務省のページを開く |
規則は改訂されます。
この記事で確認したのはDFARSが2023年10月版、DoDIが2024年11月27日版です。
まとめ|迷彩を止めているのは国際法ではなく契約ルール
調べ直してわかったことは3つです。
ガチ調査でわかったこと
- 迷彩柄そのものを禁止した国際法は存在しない
- 本当の理由はアメリカ国防総省の契約ルール(DFARS 252.225-7040・DoDI 3020.41)
- ただし書面の許可という例外もあるので「絶対に着ない」とも言い切れない
国際人道法が見ているのは「誰の軍服か」と「何をしたか」。
柄で判断する条文は、ひとつもありませんでした。
あらためて、本当にありがとうございます!
そしてサバゲーの話にもどると、答えはやっぱり「好きな服を着ればいい」です。
もちろん、PMC装備の記事のほうも訂正済みです。
間違っていた部分に取り消し線を引いて、訂正文を足してあります。
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